キミの生まれた日、その夜

むかし思春期まっ直中のころに誰かが言ってた。
「人生最後の３０年いらないから、今この時をあと１年余分に欲しい」って。
たぶん、今が絶頂期でこの先楽しいことなんてないと思ってたんだろう。

2004年の春、コドモがこの世に生まれた日の夜、
私はひとり、夜の高速道路を走らせながら家路に向かっていた。
この日病院であったことを思い返しながら。
彼女の母のうろたえた様子、彼女の頬を伝った涙。
初めてコドモを見付けた時の自分の心臓の音。
そしてコドモを抱き上げたときの温かさ。
たくさんの出来事を反すうしながら、ボーッと車を走らせる。
前方を走る車の赤いテールランプを見つめながら、
なぜか体がゾクゾクと震えているのに気が付いた。

「死にたくない。」
今は絶対に死にたくない、絶対に生きていたい。
心のどこからか強烈なメッセージが沸き起こってくる。
その時、頭の中はその言葉に埋め尽くされていた。
彼女とコドモを守りたいという使命感だろうか？
コドモの成長を見続けたいという心？
何故だろう。
ただただ、死にたくないという想いが込み上げていた。

その時、ふと思春期の頃に毒づいていた言葉を思い出した。
「最後の３０年はいらないから、今をあと１年余分に欲しい。」
誰かの言葉を借りて言っていた、むかしの自分の言葉だ。
冗談じゃない。
こんなにも、死にたくない。
こんなにも、生きていたい。
最後の３０年がいらないなんて、冗談じゃない。

私は死にたくないなんて、今までに思った事もなかったし、
生きるとか死ぬとかに対して、なんのリアリティも持ったことはなかった。
しかしながらコドモを、家族を持ったことで、
今までになかった感情が自分の中に生まれた。

誰かのために生きていたい、ということなんだろうか。
自分のためだけに頑張り続けるのは難しいけれど、
自分を必要としてくれる誰かのためになら頑張ることが出来る。
瀕死の重傷から奇跡の生還を果たした、
レーサーの太田哲也さんの著書の中の言葉だ。

私はうれしくなった。
自分がそうやって思える日がきたことに。
そして、そう思っている自分にも。

その日から、私はなんとなくこの言葉を持ち続けている。
コドモと遊んでいる時やお風呂に入っている時、
寝グズリされて困り果てて夫婦で悩んだ時。
彼女の作った料理が美味しかった時。
仕事で無理難題にぶち当たった時。
いつも、生きてるっていいなぁなんて感じて、少しくすぐったくなる。
冗談では口にしても、「昔に戻りたい」なんてことは思わなくなった。
これからも、私は日々そうやって暮らしていきたい。
「生きている」という強烈な実感に感謝しながら。
　　　

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Nalfalfaも本記事をもって、ちょうど１００記事になりました。
ここを読んで下さった皆さんの温かいコメント等がなければ、
おそらくこんなに長くは続けられなかったと思います。
本当に、ありがとうございます。
2005.2.9 nal
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□関連記事□
「キミの生まれた日」
http://blog.so-net.ne.jp/nalfalfa/2004-12-23

太田哲也さんの関係HP
http://www.keep-on-racing.com/
http://www.r-style.to/ganbare/

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タグ：N&alfamiglia エッセイ

コメント 23

私も、もし今死んでしまったら何が心残りかって、一番は子供の成長を見届けられないことです。
昔は死なんてあまり考えなかったですけど。
生を近くで体験してしまうと、死も感じづにはいられなくなってしまうのでしょうか。
奥様と娘さんの優しいnalパパにnice!!!
by ぽっかぽか (2005-02-09 14:39) 

子供が生まれたとき、初めて”家族”が出来たとき。
nalさんと同じような事を思っていたなぁ・・・
あらためて思い出しました。

１００記事、おめでとうございます。
これからも素敵なブログ、続けてください。楽しみにしてます。
by はるまきママ (2005-02-09 14:41) 

とてもよく分かります。
私も若い頃は自暴自棄になっていた時もありましたが、子供を産んでから横断歩道で青になっても一息いれてから渡る、車で右左折する時も教習所で習ったまんましっかり巻き込み確認してから曲がる・・・などなど自分の身を案ずるようになりました。じゃなきゃ誰が子供の面倒みるんだ？！って感じですからね＾＾；
あ、でもさすがに踏み切りで窓あけて音の確認はしてないなぁ・・・ ((*≧ｍ≦）ﾌﾟﾌﾟｯ　
by (2005-02-09 17:19) 

１００記事おめでとうございます。
正月に実家に帰った際、母親に似たようなことを言われました。
『母、長生き宣言！の巻』ですね。
正直なところ「そんなに重く思わんでええから、気楽に長生きしてチョウダイ」ってな感じですが・・。でもありがたいですね、親の存在。
独身なので、「親より長生き」が当面の目標です。
by arukakat (2005-02-09 18:54) 

私もｎａｌさんと同じようなこと思いました。
というか、私が死んだら、この子の面倒誰がみるの！？的な・・・使命感のようなかんじかも。
そして後悔しないように大好きだよってぎゅっとして毎日過ごしてます。
by nikukyu (2005-02-09 19:05) 

今私のお腹の中には7ヶ月の子がいます。
今私が死ねないのはもちろんですが、ダンナにも、
nalさんと同じような感情が沸き上がってくれれば‥‥と思います。
いや、きっとそうなることでしょう。
家族が増えるという喜び。3人で過ごすという不思議な仕事を、
これから噛みしめて楽しんで行きたいと思います。
by YuriMeine (2005-02-09 20:15) 

生きていたい。僕もそう思う。
by (2005-02-09 21:03) 

確かに。自分が具合悪くなったら一番に、子供はどうなるの？と考えてしまいます。
風邪で熱のある日も、明日の朝そのまま目が覚めなかったら子供の朝ごはんは・・・なんて考えるので、大げさなんですが。
by りんたろ (2005-02-09 21:17) 

私もそう思います。。。
毎日がちょっとした事でも楽しく感じられるのって幸せですよね。
絶対に死ねない！生きていたいです♪
いつも楽しい＆あったかい記事楽しみにしています。続けて下さいね・・・
by haruharu-hitorigoto (2005-02-09 21:20) 

生きた！そういえる人生を！
by ブタゴリラ (2005-02-09 22:14) 

１００記事おめでとうございます！
ボクも生まれてきてはじめて親を持ったとき、『絶対に死ねない！ボクは一生懸命に生きるんだ！！』と誓いました。パパとママもボクのそんな気持ちに応えてくれてるんだと思ってます。
by (2005-02-09 22:53) 

こんばんは
生きていたい、ですか。
死にたくない、でない所がフカイですね。
死にたくないは自分のタメ、生きていたいは誰かのタメ。
とも感じ取れますよね。
日本語で良かった、と思う所かも。
理知的には同じ様な意味かもしれませんが、言葉が違えば心が違う。
心が違うから想いが違う。
ヒトに与える響きも、ね、、ですね。

ちとマヂ過ぎ、、、お土産おいトコ
(／＼)イナイイナイ＼(^o^)／バァァ
ってのはどうでしょ？
by アキオ (2005-02-09 23:01) 

はじめまして。
読んでて涙がでそうになりました。
自分が子供を産んだときのことを思い出しました。
この子を一生守っていこう。と思ったあの日を。
生きてるって本当にすばらしいことですね！
by ちゅーりっぷ (2005-02-09 23:38) 

僕も全く同じことを思ったことがあります。
お互いこれからもしっかり生きていきましょう！
そして生きていることをいろんな意味で楽しみたいですね。
by chocolab (2005-02-10 02:52) 

父親が余命一年を宣告された時。父親の死を看取った時。
母や兄達は何を考えていたのだろう･･･と、ふと考え直してしまいました。
自分が窮地に立ち彷徨った時、残される親を考えて抜け出せた事もある。
心から大切･･･と思う人が居るって、素晴らしい事ですよね。
「生きよう・生きていたい・生きていかなきゃ」と思えます。
放り出したくなる事もあるけど、切り抜けた時の解放感と充実感。
人間、日々勉強。人生楽しまなきゃ損。楽天家の私のモットーです。。。＾＾；
by ＨＡＬ (2005-02-10 10:35) 

こんにちは、僕も子供が生まれるまでは、そういう気持ちにはなりませんでしたが、やはり家庭を持ち、子供が生まれると気持ちに変化がでますよね。
これからもnalさんの楽しい記事を楽しみにしています。

ちなみに、土偶、イヤ、奇遇にも僕も100件目だったのでTBさせて頂きました。
by DB8 (2005-02-10 13:18) 

＞ぽっかぽかさん
私は双方の祖父が私が産まれる前に亡くなっているし、親戚等も少ないので「死」の経験があまりないからなのか、「生」の経験は強烈でした。
＞はるまきママさん
最近はるまきママさんの激しいツッコミ満載のブログっぷりが好きです。
＞きゃさりんさん
そうなんです。この夜、急にスピードが恐くなったんです。あと、自分のように一時期はコドモもひねくれた物の味方をする時期があるのかと思うと、ちょっと切ないです。
＞arukakatさん
ひょっとして親もそんなふうに思っているのかな、と考えるようになりました。照れくさいのでいつものままですが。
＞nikukyuさん
暴論ですけど、きっと私がいなくてもコドモは育つとは思うんですよね。きっと家族と一緒に自分も育っていきたいんだろうな、と思います。
＞YuriMeineさん
オナカが大きいのが目で見てわかるようになると、ダンナとしても気持ちが少し変わってきますよね。でも、現実感がないという面もあります。「生」を間近で見てしまったら、なにかしらの衝動が湧くのだと思います。
by nal (2005-02-10 16:49) 

＞ふじかわさん
なんて、毎日全身で生と向き合ってるんでしょうね。自然の生の力も強烈だと思います。
＞りんたろさん
自分ひとりのときは頭が痛かろうが何の気にもしなかったんですが、確かにドキっとします。
＞はるはるさん
なんか急に目の前にある家族という現実を意識してしまうことがあります。うーん、生きてるなぁってカンジで。
＞ブタゴリラさん
その通り！（笑）
＞たきゅたきゅさん
そう思っててくれると、パパもママもうれしくてタマランと思うよ！
＞akioさん
今考えると、「死ぬ訳にはいかない」「死ねない」というのが近いのかなぁと思います。
これが適当なのかどうなのかは悩むところですけど。
by nal (2005-02-10 16:55) 

＞ちゅーりっぷさん
照れます（微笑）今は私と彼女がいないと存在さえ難しいコドモですが、いつかは私が守らなくてもよくなる。そんな日のことを考えます。
＞ちょこらぶさん
やっぱりですか！急に頭に言葉が突き刺さって来て、自分でもあの時は動揺したんです。楽しくいきましょう！
＞HALさん
楽しまなきゃ損。いいです！スバラシイ！コドモ、家族を守るのではなくて、私がコドモと家族のおかげで生きていられるようにも思えます。
＞DB８さん
ボチボチ続けて行きましょう、これからも。
by nal (2005-02-10 17:00) 

nalさんの記事はいつも読んでて
とてもあったかい気持ちになります。
私はまだ子供を産んだこともないから
未知の感情がたくさんあるけれど
でもだからこそ感じられる気持ちもあることを
nalさんや色々な方のblogを拝見して最近再確認しました。
そして勝手にRくんにも親近感湧いてます。（笑）
これからも楽しみにしてまーす☆
by 紬 (2005-02-12 12:47) 

＞紬さん
ワタシは少子化対策委員会に入ってますからっ！（嘘）というのは置いておいて、確かに心の拠り所になってます。Rクンの実物は、想像を絶するカワイさですよ！（笑）
by nal (2005-02-13 09:37) 

読みながら涙があふれてきました。
本当に命って尊いものですね。改めて感じさせてもらいました。
私は今、夫と遠く離れて暮らしていますが
夫には「絶対生きて帰って来て！」と言っています。（ちょっと大げさですね・・・）生きててくれればそれでいい、と思うようになったのは子供がお腹の中にいるからなのかな？
by あーさん (2005-02-18 15:42) 

絶対そうですよ、コドモのおかげ。本当にコドモが気付かせてくれることだらけです。
by nal (2005-02-18 17:22)