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7歳。鮮明にある記憶 [おもいでがたり]

憶えているのは、テストで0点だったこと。
しっかり憶えているわけじゃないけれど、その後先生に言われたことはよく憶えている。
    
「字は右手で書いたほうが書きやすいように出来てるからね。」
   
ボクは文字を知らなかった。
ボクが通っていたのは保育園だったから、文字を習わなかった。
小学校に入学していつのことかは忘れたけれど、
ある時ボクはテストで0点を取った。
   
理由は、ひらがなが全部左右反転していたことだ。
今でもやってみると分かるのだけれど、左手で文字を書こうとすると、
絶対に左右反転したほうが書きやすい。
左利きだったボクはその後矯正され、書く事に関しては右利きになった。
         
それが6歳の自分について憶えている、ただひとつの記憶。
     
    
翌年の小学2年生になった7歳、
ある時の席替えでボクは前から2列目の席になった。
たぶん1学期のことだと思う。
その頃からのことを、ボクは鮮明に憶えている。
    
となりの席と後ろの席が、やたらと元気の良い2人のオンナのコだった。
まだ異性に興味を持つとか、そんなカケラも無い頃の話。
その二人がやたらと積極的で、
先生が質問するとすべての問いに対して手を挙げるコたちだった。
  
ボクは最初、目をパチクリ。
先生も授業中はその二人ばかりを見ていたように思う。
そのうち、間に挟まれているボクのことも先生は名指しするようになった。
   
「いつも2人が答えてばかりだから、今度はnalクンが読んで。」
    
そんなカンジで教科書を読まされはじめた。
1年生の頃の記憶がほとんどないくらいだから、
きっとボクは箸にも棒にもかからないようなありふれたフツーのコドモだったのだろう。
けれどその頃から、やたらと先生に名指しされるコドモになった。
    
何度も当てられて教科書を読む。
最初は小さな声でボソボソ読んでいたのかもしれないけれど、
そのうち大きな声で上手に読めるようになった。
するととなりと後ろの2人が大きな声でボクをからかいはやし立てた。
ますます教室で目立つようになった。
     
それから1ケ月も経たないうちに、
ボクはどの質問にも「はーい!」と大声で手を挙げるコドモになっていた。
前から2列目と3列目、どの質問にも手を挙げまくるコドモ3人。
そうすると、最初は分からなかった質問もあったかもしれないけれど、
当てられても答えられるようにちゃんと授業を聞くようになった。
   
憶えているのは、その頃のテストはほぼ100点だったこと。
なぜ憶えているのかというと、その頃のボクの小遣いは100点とると100円だった。
テストがあるたびに大喜びでお母さんに見せて100円もらっていた。
98点とかでも、ものすごく悔しかったことをよく憶えている。
  
そうして気が付けば、2学期にはボクは学級委員になっていた。
通知表もパーフェクトに近い数字が並んでいたように思う。
その後も卒業まで、学級委員とか児童会長とかそういう役割を小学校でずっと担っていた。
特に児童会の児童会長なんて立候補制だ。
立候補して、自分でポスターを作って投票前日には演説をする。
今つくづく思うのだけれど、ボクは基本的には臆病で引っ込み思案な性格だと思う。
そんなボクが運動会なんかでは来賓に混ざって挨拶していた。
行進なんかも全校児童の最前列で一人で歩いていた。
いつのまにかボクはそういう社交的で饒舌なコドモになっていたのだ。
   
それもすべては7歳のあの時、席替えであの席になったからだ。
あの席じゃなかったら、違うコドモだっただろうし今も違う自分になっていたことだろう。
基本的には今でも受け身で内にこもるタイプだと思うけれど、
今日まで営業職としてやっていられるのは、小学生の頃から続く経験があるからだろう。
  
    
  
現在我が家には幼いコドモが二人居て、
幼稚園がいいのか保育園がいいのかとか習い事はどうしようとか、
コドモの将来について彼女と話すことも多い。
けれど自分のあの頃を思い返してみるとどうだろう。
  
偶然ボクはあの席に座ったことで、
そこから現在につながる人間性が形成されはじめたように思える。
そう思うと、親だからってコドモの人生に対してすべての責任があるだとか、
なにもかも背負おうだとか、そんなことは無意味にも思える。
 
道標くらいは示してあげたいけれど、
結局は環境のなかで影響され、もしくは勝手に学んで勝手に進んで行く。
ボク自身がそうだったように。
   
だからボクもそういう風にコドモと接して行きたい。
とはいえ落ちそうなガケがあれば、思わず手を差し伸ばしてしまうのだけれど…。
    
 
それにしても、あの頃後ろと隣りに居たミカちゃんとミナちゃんは元気かな…。
キミたちのおかげで今のボクのベースが出来たんだろうなと、
何年かに一度、不意にあの頃のキミたちのことを思い出すんだ。


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コメント 8

gottu329

どこの学校に行くかではなく、どんな友人と知り合うかの方が大切ってことですよね。
by gottu329 (2007-04-14 08:38) 

 おはようございます。
そうに思えるnalさんが素晴らしい!!
by (2007-04-14 08:42) 

りうが

プラスな出会いにniceです。
左利きだったのですね、天才肌が多いと聞きます。
by りうが (2007-04-14 23:36) 

JOHN

どんな出会いがあるかで人生は変わるものですね。
んー、その出会いをどう捉えるかで変わるのでしょう。
RクンとHクン、これからたくさんの出会いで何を学んで
どんな風に生きていくのでしょうね。楽しみだなぁ^^
by JOHN (2007-04-17 09:36) 

なにか一つのきっかけでその後の自分が大きく変わることってあるんですよね。
ボクもきっとそういった出会いがあった・・・と思う。。。(^^;
by (2007-04-17 18:41) 

ccq

自分でがんばってきたつもりで実はおやじがちゃんと根回ししてくれていたなんてことが今になってゴロゴロわかってきました(笑)
by ccq (2007-04-18 22:39) 

nal

>hgchさん
偶然というか…なんとゆーかインシュアラーって言うんですかね?自分たちでは及ばないモノがあるんですよね、やっぱ。
>sakuranboさん
マジでこの頃から記憶が鮮明なんです。それまでのこと、あんま憶えてないんですよねー。
>りうがさん
話はキレーに終わるトコまでで終わってますが、中学高校編まで書くと、アレです。コドモの頃に「お?優秀!?」と思ってても将来につながらないという良い見本ですよ(苦笑)
>JOHNさん
けっこう受け身な人間なんですよ。小4の頃でもタバコ吸ってる同級生とよく2人で遊んでましたし。なんで…タンタンと消化できるコドモだったのは確かなようです。
by nal (2007-04-19 14:54) 

nal

>たろうさん
そうですよ!!!で、たまにはそんなこと思い出したりしません?
>ccqさん
そうなんですよね。見守ることも素晴らしいことなわけで。けっこう放置してくれた両親に感謝。
by nal (2007-04-19 14:55) 

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