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変わらないもの~Coyote~ [映画音楽本とか]

”宇宙は歪んだ卵 
世界中に知らせてやれ”
 
   
   
いつもシーンの先頭を走るヒーローだった。
メロディにおさまり切らないほどのリリックを詰め込んだ”アンジェリーナ”。
  
”まごころに出会えるその時まで”
  
こんなプリミティブな言葉をロックンロールに添えるなんて事は、
”SOMEDAY”までなかったのだろうと思う。
  
そして彼は頂点に立った瞬間に、
いつもいつもオーディエンスの期待を裏切って
まったく違うステージに立っていた。
 
85年、彼は日本にはじめてヒップホップを持ち込んだ。
その後もポエトリーリーディングによるソングブックを発売。
独自レーベルを立ち上げ、
黎明期のウェブにミュージシャンとして初めてホームページを設立した。
いつもいつも彼は、時代のエッジに居た。
  
佐野元春は、いつも僕のヒーローだった。
 
 
お気に入りのアルバムを挙げろと言われると、
私は”ナポレオンフィッシュと泳ぐ日”や”カフェボヘミア”をあげる。
佐野元春に出会うには若干世代が遅い私は、リアルタイムで”SOMEDAY”に出会わなかった。
その後むさぼるように”ロックンロールナイト”や”HEARTBEAT”を聞いたものの、
心に残っているのはやはり、90年前後のアルバムたちだ。

酷暑の中、ロードスターの屋根を開けて走りながら聞いた”SWEET16”。
土曜日の仕事帰りの夜にカーラジオから流れた”Wild Hearts”。
彼女とうまく行かなかった時に胸に突き刺さった”君を連れていく”。

しゃがれた彼の声は、いつも私のそばにあった。
 
 
そんな彼ももはや50代だ。
そして、アンジェリーナでシャウトして世に出てから27年の月日が過ぎた。
  
今でも基本的に彼のことは好きだし、発売になったアルバムは必ず購入している。
けれどかつてのように、
ライブアルバムやDVDまでかき集めることはなくなってしまった。
    
  
そんな彼が、先月新しいアルバムを発表した。
  
   
  

COYOTE(初回限定盤)(DVD付)

COYOTE(初回限定盤)(DVD付)

  • アーティスト: 佐野元春
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
  • 発売日: 2007/06/13
  • メディア: CD


  
 
  
私は、本当に感動した。
うろたえるほどに感動してしまったのだ。

オープニングから、
いきなりエッジの効いたカッティングが耳に刺さって来た。
それは練れたというよりも、プリミティブな若さに溢れたトゲ。
それは目の前のスタジオでセッションしているようなリアルな音の洪水。
 
   
”宇宙は歪んだ卵 世界中に知らせてやれ”
 
 
どこの誰がこんなリリックを思いつくのだろう?
そこには、彼にしか表現出来ない言葉が散りばめられていた。
かつて”まごころ”という言葉を一番大切なものとしたように、
”茜(あかね)色の空 滲んで”と歌うコヨーテ。

”勝利ある 勝利あるのみ Show Real”

と、ハッピーではない(かもしれない)現在と未来を淡々と生きろと説く。

”もしも君が気高い孤独なら その魂を空に広げて”
”雲の切れ間に 君のイナズマを 遠く遠く解き放ってやれ”

孤立でも孤独でもなく、”気高い孤独”に向けた、
あまりにもあからさまでシンプルなメッセージ。
彼は”コヨーテ”なる人物にアルバムの中を旅をさせ、
12の物語の中でコヨーテに語らせ、そして現実を置いた。

80年代に”ガラスのジェネレーション”で
”つまらない大人にはなりたくない”と宣言した佐野元春は
90年代に”ぼくは大人になった”と歌ったが、
2007年の今、彼はコヨーテにこう語らせる。

”誰もがとまどいながら 大人になっていく”

それは青臭い反抗でも抗えない現実への諦めでもない。
君の憎む大人たちも、君が尊敬する大人たちも、
そしてこんな大人になってしまったと落ち込んでいる大人たちも、
今を生きることに懸命な僕たちにも、
コヨーテが等しく語りかける等身大のリリックなのだ。

年を重ねれば、誰もが練れていくし分別を憶えて往く。
悲しいけれど、かつての瑞々しかった自分に戻れないと悲観することもある。
けれどそうじゃない。
彼は2007年の今、こんなにも瑞々しくそしてシンプルな言葉で語り、
そして尖ったカッティングで私を挑発した。
 
誰もが戸惑いながら大人になるのだけれど、
大人になったからって変わらないものだってある。

このアルバムは、二人称で語られる曲が多い。
それは劇中のコヨーテが劇中人物に語りかける二人称。

けれど私にとって”君”は”僕”。
僕自身に語りかけているように聞こえる。
そしてシンプルな色のない言葉たちが想像力の海で泳ぐ。
 
 
一時期ブルースに傾き、練れた音楽に身を投じつつあった彼。
あの頃の声は失ってしまったけれど、彼は再び時代のナイフの先端に立った。
 
伝説になるにはまだ早すぎる。

そして彼は、これからも荒地を突き進んでいくのだろう。





<追記>

推敲なしに一気書きですので文章破綻してたらスミマセン。

見直す気もない(汗)

それから"Moto's web server"で見つけたのでコレを貼っておきます。
 
 
 
 
 
 


"Moto's web server"より
http://www.moto.co.jp/






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コメント 13

ゆっきぃ

佐野元春さんはそんなにメッセージ性の高い
ミュージシャンだったのですか・・・。
全然知らなかったです。そして聞いたこと無かったです。
かなり反省。。。
by ゆっきぃ (2007-07-10 12:13) 

poi

私も買ったよ~(笑)
同じくDVD付を♪
by poi (2007-07-10 13:10) 

アンジェリーナ♪ 高校の時バンドでやってました(^^)
この曲の為だけにフランジャー買ったので印象に残ってます(^^;
by (2007-07-10 17:52) 

someday、ガラスのジェネレーションは
かつてのカラオケ定番曲でしたよw
by (2007-07-10 19:55) 

norinori27

音楽の可能性が無限であるように、彼のこの先のロック人生も無限に
広がっているはずですね。
by norinori27 (2007-07-10 23:49) 

nal

>ゆっきぃさん
彼は希有なメロディメーカー、アレンジャーであることで、突出したリリックがメロディで埋没してしまうんですね。シニカルでイノセントな彼の詩は、まさに「歌詞」ではなく「詩」です。
>poiさん
こないだ初めてDVD見ました!車内で(苦笑)
>たろうさん
ブルルッエンジン〜うならせてぇ♪
>ばあんばんさん
完全になり切って歌う元会社の先輩が居るんです。
学生時代は同じ髪型(ライオン髪)だったらしい(苦笑)
by nal (2007-07-11 09:50) 

nal

>norinoriさん
優れた歌を、世に迎合せずに作りつづけるってホントにものすごいと思います。こんなブログでさえどんどんネタが陳腐化ってゆーか題材が尽きて行きますからね…彼はスゴイ!
by nal (2007-07-11 09:51) 

JOHN

聞いてみたくなりました。
SOMEDAYもアンジェリーナもガラスのジェネレーションも歌えますけど、
ちゃんと聞いたことはないような気がします。
by JOHN (2007-07-11 13:49) 

nal

>JOHNさん
あげて頂いた曲が、全部80-83年なんですね。その後も彼は頑張ってますよん♪
by nal (2007-07-12 10:10) 

JACK

個人的には、メディア露出が多くなった頃から
自分が曲やラジオを聴いて抱いて佐野元春のイメージとTVから受け取れるそれとのギャップがあまりにも大きくてショックでそれ依頼、遠ざかってました・・・。

でも、nalさんが絶賛してるように新譜いいみたいですね!
聴いてないけど・・・
この前観た、某アーティストのライブでも「佐野さんの新譜聴いた?すごくいいよ」ってMCで行っておりました。
久々に聴いてみようかな元春。。。
by JACK (2007-07-19 19:05) 

nal

>JACKさん
たま〜にHEYHEYHEYとか出てるとワタシは率先して見ます。ふだんは見ないのに(笑)coyoteは素晴らしいですよ。
なんつーか…ナポレオンフィッシュ+SWEET16ってカンジかなぁ…。心残りはシャウトを失ってしまったことですけど。これで当時の声が健在だったら、歴史に残る名盤ですよ。
by nal (2007-07-20 09:13) 

JACK

COYOTEを買って聴いてみましたよ。
フルーツあたりくらいからボクには、元春がつまらない大人に見えてしまってたんだよなぁ…。
10年振りに再会したそこには熟成され味わい深い大人のロックを奏でる元春がいました。自分が大人になってしまったということもあるんだろうけど、言葉が心に突き刺さってきますね。聴いてると、ちょうど十代の頃に初めて触れたあの感覚に近いものを思い出させる。
あぁ絶賛するわけだよ…。 これ最高傑作ですね!!
by JACK (2007-07-25 22:14) 

nal

>JACKさん
買いましたか!買いましたかーーー!!!!
ワタシは売り上げに貢献しましたね(笑)
なんというか、オトナなアレンジ(英っぽい?)なのに瑞々しいというか純というか、ものすごいイイじゃないですか(意味不明なコメントだな…)コトバもすごーく簡単な歌詞なのに深くて刺さるというか…やっぱイイですよ。ずっとクルマでしか聞いてなかったんですが、こないだ初めて家で大音量で聞いたら「コヨーテ、海へ」のアレンジで再び感動してしまいました。ナビのオマケのオーディオじゃ聞こえない音が聞こえてきました〜。
by nal (2007-07-28 09:34) 

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