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6.25m2の屋根の下で [♡ABARTH]

昨日までの雨が嘘のように晴れ上がった、日曜日。
ワタシは雨上がりで不快指数100%な駐車場でまどろんでいた。

一体、気温は何度あるんだろう。35度はあるんじゃないか。
頭皮から額に向けて流れ落ちる汗をぬぐいながら、それでもなお駐車場に居続けた。

救いは、一辺2.5mのアウトドア用のテントと、吹き抜ける風。
けっこうな市街地なのにこの場所は風通しが良い。
涼やかな風がワタシの頬を撫でていく。
ホームセンターなんかでよく売っているワンタッチ式の折りたたみテントは、
簡易で全幅の信頼は置けそうにないけれど、
でも組み立ては簡単だし何よりも直射は遮ってくれる。
ワタシは陽を遮ってくれているテントに感謝しながら、
じっと椅子に腰掛けてあれやこれやを考えていた。




01.jpg

 
 
それでもなおジリジリと熱を帯びる駐車場の一角。
梅雨特有のジメジメした空気は多少のことでは消え去らない。
スウッと抜けていく風に包まれながらもワタシの思考能力は少しずつ低下していった。
思い立ったようにパンフレットを広げたり計算機を叩いたり、
もちろん来客があればそこからはオンモードだ。
精一杯のお見送りを終えると、再びワタシは6.25平米のテント下の住人となった。


この日もテント下の住人になって、かれこれ4時間は経っただろうか。
午後2時、おそらく一日でいちばん暑くぬかるんだような心持ちになる時間。
こちらに向かって妙齢のご婦人がそそくさと歩いてきた。お客様だ。
続いてタイミング良く1台のミニバンが駐車場に停車。
タイミングを合わせたように2組のお客様が来訪された。
  
ワタシは笑顔で「こんにちは〜!」と声をかける。
  
「ちょっと見せてもらっていいかしら?」
  
「どうぞどうぞ〜♪」

ご婦人は少しずつこちらに足を向けている。
ミニバンでは若いファミリーがまだお子さんを降ろそうとしていた。
ワタシは2組ぶんの受付用紙を用意しよう手を動かしていた。


まさにそのときに、事件は起こった。
  
 
何者かが、ワタシの視野の端あたりで激しく動いた。
それは上方に向かっていた。
  
ぶあん!
 
アウトドア用テントで遮られていたはずの陽射し。
ワタシが居座っていたテントの下のカウンターと椅子が、
突然に明るくなった瞬間。
 
ワタシの視野の端で激しく上方に移動したもの。
 
それは、アウトドア用テントの「足」だった。
 
 
 
突風だ。
 
我が頬を撫でる間もなく突然にやってきた強風は、
アルミ製で出来たアウトドア用のテントの屋根をアドバルーンの様にふくらませると、
風圧に耐えきれなくなったテントの足は風にあおられた。
 
 
 
ぶおん!ぐあああああああ!!!
 
 
 
ワタシは強風を一切感じなかった。
この日はさわやかなそよ風が抜ける穏やかな午後だった。
突風がやってくるなんて、とても想像出来ないような日だった。
 
幸運なことにご婦人もミニバンのファミリーもまだテントから離れた場所に居た。
その間、時間にしてわずか1秒足らずだったことだろう。
 
 
 
持ち上げられた足は瞬く間にワタシの顔の横を抜け、
テントの屋根はワタシの上方から後頭部へと移動。
ワタシの背後へとみるみる倒れ始めたのだ。
 
 
あ!
 
 
 
 
あああああああ!!!!!!
 
 
 
背後には、ワタシの愛するABARTH500が停まっていた。
テントからの距離はたぶん2mほどだったことだろう。
 
 
 
あああああ!!!!!!!ぶつかるうううううううぅぅぅぅぅぅ…………。
 
 
 
 
 




書きたくはないが、書いてしまおう。
6.25平方メートルの面積を持つ一辺2.5メートルのテントは、
抵抗むなしく我が愛しのABARTH500の上にのしかかった。
 
ビニール製の屋根。アルミ製の骨組み。各所に使われている、プラスチック。

瞬間にワタシは一本の足に手を伸ばし、
せめてアルミの骨組みが直撃することだけは避けようと、
どちらかへテントを追いやろうとした。
せめてビニールの屋根部分がカーカバーのごとくにABARTH500の上に
上手に乗らないかとすがるような気持ちで一本の足に掴みかかった。
   
  
  
”ばっしゃあああん!!!!”
  
 
 
 
 
健闘むなしく、我がABARTH500は姿が見えなくなってしまったのだった。
テントに覆い被されて、隠れてしまったABARTH500。
 
「ちょ…あああ……すげぇ………。」
 
テントに覆われたABARTH500を見つめるワタシの背後から、
若いファミリーの旦那様の驚く声。
同じくご婦人の「あららら……大丈夫ですか?」という心配そうな声。
  
 
ぱちんっ!

 
瞬間にワタシのスイッチは切り替わった。
というよりもまさに事態が進行していた時もそうだった。
 
まずお客様の様子を確認し、距離が離れていたので無事だったことを確認。
 
  
「だ、大丈夫ですか?せっかく来て頂いたのにすみません!」
「片付けますので少しだけお待ち頂けますか?」
 
 
努めて冷静に客観的に倒れたテントを見つめ、
どうすれば一番効率的にこの事態を撤収できるのか考えた。
すぐに伸ばしてあった足を短くし、二次被害が起こらないように対処。
続いてお客様が通れるようにするするとABARTH500の上からテントを引きずり降ろした。
まずはサイズを小さくせねばならない。
 
するとお客様も一緒になって片付けてくれた。
 
「すみません……ワタシの不始末の手伝いまでしていただいて…ありがとうございます!」
 
 
なんとか事態は片付いてきた。
ワタシは手を動かしながらお客様との会話を続けた。
手を動かしながら視線を隣りの建物へと移す。
被害が及んでいないか会話しつつ凝視して、外壁の具合を確かめる。
 
どうやら、何事もないようだ……。
 
 
 
 
は、はああああああああ………助かった…………。
 
 
 
その後は勤めて冷静を保つように自らに言い聞かせつつ、仕事を続行。
お客様にひととおりの案内をしお見送りを終えた。
 
「先ほどは本当にありがとうございました!ご心配おかけしました!」
 
 
 
 
 
 
さて。
 
 
ぶっちゃけ冷静な表面とは裏腹に、当たり前だろっ!!!
 
冷静なわけねーっつーんだ!!!!
 
完全に絶望していたさ。ああそうさ号泣してもいいくらいの勢いだったサ。

フロントガラスがぶわっしゃんって割れてもおかしくないような倒れ方だったもん。
幸運にもガラス、割れてなかったけどさ。
 
 
どんだけボディ、ヘコんでるんやろ……。
セルフ10円パンチみたいな傷、どんだけ出来ちゃってるんやろ……。
 
 
 
見たくないっ!!!
 
そんなABARTH500ちゃん、見たくないっ!!!
 
時間よ、お願いだから止まってくれ〜誰か夢だと言ってくれっ!!!!!
 
 
 
なカンジなわけさ正直なところ。
 
見送りを終えるとくるりと反転し、
愛しのABARTH500ちゃんの元へとそろりそろりと歩を進めるワタシ。
30分ほど前に、我がABARTH500に起こった事故。
 
でもオレはこの30分をやり遂げたぞ!!
社会人として職務を全うしたゾ!!!
 
もうABARTH500のもとに駆け寄ったってイイだろう!!!
 
 
 
そうだろう!!!

 
 
 
ABARTHちゃんよおおおおおおおおお!!!!
  
 
 
 
 
 
 
 
んで、結論。
 

 
 
 
キズ、数カ所アリ。
 
 
 

でもね。
 
 
 
まだ洗車してないから何とも言えないんだけど。
 
コンパウンドで消せそうなキズ、だけだったの。
 
5ミリとかのちっちゃいキズだけだったの。
 
 
 
ワタシ、マジでべっこんべっこんになってる覚悟してたんよ。
 
でも、ワタシしか気にしないようなキズしかついてなかったの!!!!!
 
 
 
 
 
良かったーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
 
 
 
 
良かった良かった!!!!!マジで助かった!!!!!
あの状態でこんな程度で済んで良かった!!!!!
 
いちばん最初に見つけたのは、フロントエンブレムのすぐ脇にうっすらとついたキズ。
ワタシはおそるおそる、指の腹で軽く撫でてみた。
たぶん、大丈夫。
ほとんどわからないところまで消せそうなキズだった。
 
このときのワタシの顔、誰にも見せられなかったことだろう。
悲しみの後に安堵というか歓喜というか、愛情全開というか。
狂おしいまでにラブラブ光線な視線でエンブレムのあたりを見つめていたことだろう。
 
 
誰にも被害を与えず、そして自らも最小限で済んだ。
 
 
 
で、そんなABARTH500を愛でていた姿、お客様に見られてたんだけどね(苦笑)
振り返るとそこにはすでに新しいお客様のミニバンが止まっていた。
  
 
…あ、あわわわ…ハズカチッ!クルマ愛でてるの、見られたーーーーー(恥)
  
 
 
と思ったら。
 
 
 
 
「あれれれれ!nalさんじゃん!nalさんでしょ?」
 
 
1台に2組のご夫婦の乗ったそのお客様。
顔を見てみれば3年ほど前にお手伝いさせて頂いたT様だった。

T様が、ご友人夫妻のために一緒に
我が社がやっているとも知らずにやってきたのだった……。
 
「nalさん!なんか今クルマんとこでうずくまってましたよね?」
 
 
 
 
「ええ、実はつい先ほど、おそろしい事故がありまして……。」
 
んでことの顛末を話したところT様、爆笑!!!!
  
 
「ままままじっすか?あの玄関トコに置いてあるの、壊れたテントっすか?」
 
 
 
「ええ……ワタシ実は今、深海より深く沈んでいるんですよ……。」
「だから代わりにTさんにご友人の案内やっていただいていいですか?」
  
「ぶははは!!!報酬くれたらやりますよ〜♪」

なカンジでT様のおかげで悲しむ間もなく今回の件はネタとして使った。
場の空気も柔らかくなり、ワタシの悲しみもずいぶんと癒えた。
 
 
 
突風なんて来る気配すらない穏やかな日曜日。
ぶっちゃけ、油断してたのはワタシだ。
吹きさらしの場所ではちゃんと杭打って固定するんだけど、
今回は固定してなかったのだから。
 
気をつけよう。
 
油断大敵、回り回って我が身に帰ってきますからね!!!
 
 
 



 
02.jpg

 
 
 
最近一発で壁から5cmくらいまで寄せられるようになったので、
「どう?すげえでしょ?」なんて記事にしたろかと撮っていた写真。
 
 
03.jpg

 

こんな写真載せてる場合じゃない日曜日なのでした〜。
 
  
 


■PHOTOS■Olympus E-30 + Zuiko Digital ED 50mm F2.0 Macro
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ghie

(/||| ̄▽)/ゲッ!!!

身の毛がよだちました。

冒頭の状況。配置図。。。
その後の展開が、容易に想像が出来てしまい...読みながら、うっ(汗)この先読みたくない・・・ってな気持ちにさえなりました。
が。
大事に至らなくて、ホントーに良かったっす。
おまけに。
nalさま、エライね〜 ♪
お仕事、良く頑張ったね〜 ♪♪
ナデナデしてあげる( ̄▽ ̄;

ってか。
本気で、この時のnalさまの気持ちが判っちゃいます。
お互い、以後気をつけましょ。

でも。
ドロドロに汚れても、傷が付いても・・・こんな気持ちにならずに済む...

http://www.imoconcept.com/

こんなクルマに・・・は、乗りたくないんだよなぁ。。。(爆)
by ghie (2010-07-06 12:43) 

nal

>ghieさん
コレ……掃除機ですか?(爆)
つーか遊園地のジェットコースターの一部?(再爆)
いや〜ほんとに……「俺、終わった……」って思いましたよ。どんな惨状なのかと…そしたら案外大丈夫で、飛び石キズがバンパーに付いた程度だったんでホッとしました。あの瞬間、動画にしたいくらいですよ(笑)

by nal (2010-07-06 15:50) 

アキオ

うわーーーー、これは間一髪でしたね。
傷がつくのは道具の宿命だ、、とはいえ、
やですよねw
ま、結果の損害がそれくらいで、よかったよかったw。


うわーー、これ(シャコ入れのこと)はすごい。
凄いよnalさん、ってかんじです。
あのですね、アキオって、いつもだいたいホイールハウスから、
ホイールがちっと出てるクルマに乗ってるじゃないですか、、
そうすっと、こんなに寄せるなんて、考えちゃいけない事だったりしますよw
by アキオ (2010-07-06 18:14) 

nal

>アキオさん
まさか突風が吹くとは思えないような立地だったんですよ…ワタシが甘かったです。テントもこわれました〜1年に1回くらいは買ってますよ(泣!)
車庫入れは、特に習熟しなくても一発でこれくらいは停まります。
ココは、非常に楽です!
つーかホイールハウスからはみ出しちゃだめですよ?(ニヤ)

by nal (2010-07-07 09:44) 

のんのん

ご無事で何より!
日ごろの行いがいいからこの程度で済んだのでしょうね^^
あ、悪いから突風が吹いた!?ちがうよねっ。
by のんのん (2010-07-10 21:52) 

nal

>のんのんさん
う………(泣!)
場所柄とても突風吹きそうな場所じゃないんで……やっぱ日頃の行い!?
by nal (2010-07-14 11:04) 

JOHN

うはあ…どきどきしました。
nalさんもお客様もABARTHちゃんも無事で良かった!!
傷、ちゃんと消えましたか?
by JOHN (2010-07-25 07:07) 

nal

>JOHNさん
実は……ABARTHちゃんは、案外ありました(泣!)
4,5ヶ所かな…暑すぎでまだコンパウンドとかやってないですが…ほとんどは消せると思います。まだやってないので実は不安…。

by nal (2010-07-26 11:16) 

Nishi

これは・・・・・・・・・かなりショックですね・・・・・・・・・・・。
by Nishi (2010-07-31 11:15) 

nal

>Nishiさん
もうココロの傷も消えましたが(笑)けっこうなハプニングでしたよ……泣けます……。

by nal (2010-08-03 11:37) 

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